【ジョブ理論】って何?
【ジョブ理論】っという言葉を聞いたことありますか?
本日は【ジョブ理論】についての考え方や
実践方法、データとの関わりについて
解説させて頂きます。
まず最初に「ジョブ理論」とは何か
企業におけるイノベーションの第一人者である
クレイトン・クリステンセンさんが提唱した
イノベーションの成功/不成功のメカニズムを解き明かす理論が「ジョブ理論」。
では、「ジョブ理論」が何に役立つのか・・・
◇ジョブ理論は『顧客が製品/サービスを購入するときのストーリー』をイノベーションのカギとする!
ジョブ理論というのの根幹にあるのが
『顧客は解決したいジョブ(仕事)を片付ける為にあらゆる製品・サービスを購入する』という理論です。
朝起きて、顔を洗ったり、病院に行ったり、このブログを読んだり
日々の生活による選択すべてが『ジョブを片付ける』という目的で行われているとジョブの論理では考えます。
顧客それぞれにジョブを達成するまでのストーリーが存在していて
それを見出すことをイノベーションのカギとします。
ジョブ理論の事例として有名なのがあり
『ミルクシェイクをもっと売りたいファーストフード・チェーンの事例』
ミルクシェイクを買う理由として真っ先に思い浮かぶのは
「喉を潤したい」「味を楽しみたい」などですが。
調査チームが店頭に18時間立ち
観察を行ったところ判明したのが
午前9時前に1人でやってきた客に販売するミルクシェイクが
非常に多いという事実。
更にインタビュー調査を行った結果、次のジョブ(仕事)が見えてきました。
「朝の通勤のあいだ、ぼくの目を覚まさせていてくれて、時間をつぶさせてほしい」
これはそれまで行われていた顧客へのアンケート調査では全く浮上してこなかったジョブでした。
ここでの競合は同じく運転中の覚醒と暇つぶしを助けるガムや菓子パンなどです。
そこでより『朝のミルクシェイクを濃厚にすることで、暇つぶしを助ける機能を高める』という方策が見出されました。
ここで覚えておいてほしいのが『これが唯一の解ではない』ということです。
さらに調査を行った結果
見えてきたのが夕方の父親たちの「子どものおねだりに応えて優しい親の気分を味わいたい」というジョブ。
この場合の競合は、子どもの欲しがるおもちゃやお菓子などです。
そして、子どもの健康を考えるとあまり濃厚なシェイクを飲ませたくはないと親は考えているかもしれません。
そうなると、ミルクシェイクに求められる要素は朝とは真反対になるでしょう。
このように顧客がある製品・サービスを採用する理由=(ジョブ)は無数に存在します。
それぞれによって競合や求められる体験価値は全く異なります。
それを前提に適切なジョブを見出しそれに応えた
プロダクト・サービス設計やマーケティングを行うことでイノベーションの成功に繋がる。
その思考法こそが、ジョブ理論なのです。
クレイトン・クリステンセンさんについて
ジョブ理論提唱者のクレイトン・クリステンセンさんは
ハーバード・ビジネス・スクールの教授を長年勤めてきたビジネス理論の研究者です。
世界でも有名な経営思想家の1人になります。
同氏が1997年に提唱した「イノベーションのジレンマ」は
巨大企業が新興企業に打ち負かされてしまう不思議を解き明かした企業経営理論の古典です。
「破壊的イノベーション」など同書で広まった用語は今や経営やマーケティングの現場では
当たり前のように使用されています。
これまででジョブ理論についての内容は理解できたが
これをどう実践に活用できるのかがわからない。と思われている方も
多いと思います。
まず押さえておきたいことが、ジョブ理論の実践手順になります。
①ジョブ・ハンティング(ジョブを見出す)
②顧客がジョブを解決するために用いている現在の方法を手放し
自社の製品・サービスを雇用するまでのストーリーの作成
③顧客が自社の製品・サービズを雇用するのを妨げる要因を取り除く、または緩和する体験を用意する。
④ジョブを中心に製品・サービス・プロセス・組織を構築し、ジョブの達成を測る基準を設ける。
まずは、ジョブを見つけることから始まります。
数値、指標などにとらわれず、身の回りを観察し
顧客へのインタビュー(アンケート)も活用し
ターゲットがなぜある選択に至ったのかを掘り起こしましょう。
ここで意識するのが「無消費」も選択肢になること!
ジョブの解決策を見出せず「何も買わずに我慢する」ことを
選択している人がいれば、それは大きなジョブの鉱脈となりえます。
顧客の状態が把握できたら
次は無消費も含めた現在の選択肢を解雇し
自社の製品・サービスを採用してもらうためのストーリーをつくります。
製品も、サービスも、無でさえも並列に並べて考えるからこそ
「採用する/解雇する」というジョブ理論の用語がしっくり当てはまります。
「単に切り替えが億劫だ」「面倒くさい」と
いうのもジョブの雇用を妨げる立派な要因になります。
あらゆる可能性を考慮することにより
それらを解決する『体験』を用意することが求められます。
ジョブと製品・サービスを適切に結び付けることができれば消費者に取っての
パーパスブランド(ジョブが発生した際、真っ先に思い浮かぶブランド)になれるかもしれません。
さらにプロセスや組織までジョブに最適化すれば
他社はなかなか真似することができないのです。
それらは企業が現在に至るまでの無数の決断で形作られているため
制度やツールをそのまま真似したところで再現は不可能なのです。
注目を集めている『21世紀の石油』としての「データ」ですが
イノベーションを妨げる可能性の使い方もあります。
『ジョブ理論』において
「イノベーションのデータの誤謬』
としてあげたれている3つがあります。
①能動的データと受動的データの誤謬
②見かけ上の成長の誤謬
③確証データ誤謬
能動的データとは?
販売データや顧客の属性などマーケティングの指標として代表的であり
マネジャーが自然に注目してしまうようなデータ群のことになります。
一方ジョブに対する顧客の「無消費」や苛立ちなど、
ストーリーの中に埋もれている情報が受動的データです。
人はつい管理しやすく、わかりやすい能動的データに目を向けてしまいがちになります。
「能動的データと受動的データの誤謬」に打ち勝ち、データから現実を見出す意識が求められます。
「見かけ上の成長の誤謬」とは?
企業が成長するにつれ多くのジョブにまとめられたり、または複数の製品で対処しようとし
ジョブに即さない規模の拡大や多角化に陥ることも。
「確証データの誤謬」はデータを見る人間の『そうあってほしい』というバイアスにより
客観性が失われることを指します。
データを活用しているはずなのに結果につながらない。
という経験がある方は、思い当たる節があるのではないでしょうか。
これらの誤謬に対処するには『ジョブを中心にデータを取り扱う』ことが重要なのです。
例えばAmazonは「欲しいものをなんでも簡単に手に入れたい」というジョブに応えるため
「豊富な品揃え」「低価格」「迅速の配送」の3つを達成できているかどうかを分刻みに計測しています。
「1時間48分以内にご注文ください。お届け日:月曜日」といった表示や
基準価格に対する自動的な値下げはその実態を象徴しているでしょう。
石油と同じく精製し、適切な形に加工してはじめてデータは役に立ちます。
そのための指針としてジョブ理論を活用してみてください。